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長期の安定運用に応える高い信頼性が決め手 

2018.10.12

ファーウェイ製品で医療情報システムの仮想化基盤を更改
医療法人永仁会 所沢PET画像診断クリニック

医療法人永仁会 所沢PET画像診断クリニックは、PETを中心とした画像診断を専門とし、周辺の地域医療機関からの受託検査やがん・脳疾患・心臓病の早期発見のための検診を実施しています。画像診断施設としては埼玉県内では最大級の設備を誇り、2005年のオープン以来、7万件以上の検査を行ってきました。

同クリニックは、画像データや電子カルテ、検診データなど運営に必要なすべてのデータを処理・保存する医療情報システム基盤を2012年に仮想化しましたが、保守期間が終了する今年、新たにファーウェイのサーバー『FusionServer 2288H V5』『1288H V5』、ストレージシステム『OceanStor 2600 V3』、スイッチ『CloudEngine 6810』を採用してシステムを全面的に更改しました。

同クリニックの事務局長 横尾剛司氏、システム部 部長 小野章氏と、システム構築を担当したネットチャート株式会社 執行役員 田嶋兼悟氏、同営業本部 プロジェクト推進部 堀江珠代氏に、医療機関に求められるシステム要件とファーウェイ製品を採用いただいた経緯についてお聞きしました。

※PET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影)はがんの検査方法の1つで、X線や磁気で体の部位を撮影した画像から異変を発見するCTやMRIと異なり、体内に投与した放射能を持つ薬剤の動きからがん細胞を特定する。一度に全身の検査ができるほか、CTと組み合わせることでより正確な診断が可能。


高い専門性で地域の医療機関を支える

医療法人永仁会
所沢PET画像診断クリニック
事務局長 横尾 剛司 氏

永仁会の母体は入間市の地域病院と、市内初の特別養護老人ホームです。1994年に医療法人化するにあたり、それまで手がけていた介護に加え、画像診断にも力を入れることで特色を出そうと始めた取り組みが、所沢PET画像診断クリニックの開設につながりました。

「所沢市内には防衛医科大学校病院があります。近隣の地域医療機関として、大学病院には十分カバーしきれない領域で協力できることはないかと考えた時に、思い至ったのが画像診断でした」(横尾氏)

とりわけ、当時研究用から医療用へと導入が始まったPETに注目し、最新のPET装置と、検査に必要な放射性薬剤を院内で製剤できる設備を整え、常勤の放射線専門医を3名配置。高い専門性を追求するとともに、診断に特化し治療は行わないという方針により、防衛医科大学校病院をはじめ周辺の医療機関からの信頼を得て、受託件数を伸ばしてきました。

「現在の検査件数は、PETが月500件、MRIが300件、CTが200件ほどです。1日に検査可能な件数は限られているので大幅な増加はしていませんが、稼働率は常にほぼ100%となっています」(横尾氏)


耐障害性を最優先にクラスターから仮想化基盤へ

PETは件数が多いうえ、部位別に撮影するMRIやCTと違い全身の画像を撮ること、CT画像とあわせて読影データを作成することから、データサイズも1検査あたり数百MBにのぼります。同クリニックでは当初、こうした画像データや電子カルテ、検診データの管理や保存を複数のサーバーからなるクラスターシステムで処理していました。開設から7年を経た2012年、耐用年数を迎えたサーバーを更改するにあたり、仮想化基盤への移行に踏み切ります。

「医療機関のシステムで最も重要なのは、停止させないということ。耐障害性という点では仮想化基盤のほうが優れていると判断しました。また、更新してもこれまで使っていたアプリケーションをそのまま使い続けられるようにしたかったことも仮想化した理由の1つです。当時は仮想化の事例が増えてきていた時期で、私自身も挑戦してみたいという想いがありました」(小野氏)

医療法人永仁会
システム部 部長 小野 章 氏

データ量はおおよその見当がつくことから、この時は2012年から7年間の利用を想定し、その期間内に使い切る容量で構築していました。また、金融機関やインターネットサービスなどの用途と比べると、高速性もさほど重視していなかったといいます。


進化したシステムへスムーズに移行
7年間の保守サービスも決め手

保守期間の終了を前にシステム更改を検討するにあたり、第一の要件は「これまでどおりに動くこと」でした。「仮想化基盤では、サーバーのプラットフォームを変えてもOSはまったく変わらずに済みます。今回はOSを含めたシステムの移行もスムーズに進み、仮想化したメリットが十分活かされたと思います。保守サービスの7年間一括契約が可能だったことも、ファーウェイ製品を採用した決め手でした」(小野氏)

加えて、機能の進化や拡張性の確保といったこれまでのシステムにはない利点も実現できています。「6年前の各メーカーの機器と比べると、CPUのコア数や1台あたりに搭載できるメモリ容量は各段に増えてきています。また、今回のシステムはエンクロージャーの追加でリニアに拡張できる構成となっているので、機能の強化が必要になればディスクの追加で対応可能です」(田嶋氏)

「共有ストレージのスイッチを1Gから10Gにアップグレードし、かなりの高速化が実現できました。今後データベースへの登録件数が増えたりしても、スループットが落ちずに稼動することが期待できるのも、技術者としてはうれしいですね」(小野氏)


他事例含めて故障はゼロ
同等価格でより高スペックを実現

「安定して稼働するシステムを、できるだけ長く使っていきたい」という小野氏。そのためには製品の品質から保守面まで含めた機器メーカーに対する信頼感も求められます。

「たまたまファーウェイ製のスマートフォンを使っていたのですが、IT機器を手がけていることは知りませんでした。日本市場では後発のメーカーですし、初めての採用なので慎重に検討しましたが、調べてみると海外では長く実績があること、日本でも大手企業で採用が増えていることがわかり、安心材料になりました。また、同法人の別の病院でトライアルとして導入したサーバーが2年ほど故障なく動いていたので、耐障害性は高そうだと期待していました」(小野氏)

ネットチャート株式会社
執行役員 田嶋 兼悟 氏

ネットチャート株式会社 営業本部
プロジェクト推進部 堀江 珠代 氏


実際、故障率の低さは田嶋氏も実感するところだといいます。「他の企業や医療機関を含め、当社が納入したファーウェイ製品は故障がほとんど発生しておらず、保守サービスを使う機会がないほどです」(田嶋氏)

また、医療機関ではITコストを抑えたいという要求も高いため、低コストで高機能を実装できるという点でもファーウェイ製品は強みを発揮します。「仮想化にはサーバー1台あたりの十分なリソースと安定性が求められます。ファーウェイ製品は価格競争力を維持しつつ、既存ベンダーの機器と遜色ない仮想化基盤として提案することができます」(田嶋氏)

「今回はサーバーにSSDを使っていますが、同等価格でよりよいハードウェアを選択できるのもファーウェイ製品をおすすめできる理由の1つです」(堀江氏)

ネットチャートでは通常、ベースの構築は各メーカーの製品に精通している業者に任せていますが、ファーウェイ製品に関しては自社内で構築から手がけていただいています。「構築にあたっては手厚くサポートしてもらえるうえ、マニュアルやハンズオンの動画が充実しており、たいへん助かっています。自社で構築できるため、コスト削減にもつながっています」(堀江氏)


“つながる医療”に向けてセキュリティもより重要に

医療機関向けシステムはハードウェアとソフトウェアを一式で提案されることが多く、仮想化の動きは他業界より遅れている傾向にありました。「リソースの有効利用や耐障害性を考えると、やはり仮想環境が最適。業界全体でもそうした認識は広まってきており、大病院でも仮想化を推進するところが出てきています」(小野氏)

また、医療機関の情報化はこれまで個々の院内での電子カルテや医療用画像管理システムの普及によって進んできましたが、今後は各医療機関同士の連携におけるICTの活用が重要になると田嶋氏は考えます。「当社はグループでインターネット回線やデータセンター、クラウドサービスなどを提供していますが、“点”の医療から“面”の医療への展開にあたり、医療機関を結ぶネットワークサービスプロバイダーへの期待が高まっているのを強く感じています」(田嶋氏)

「当院でも非常勤の読影医にはVPNを使って自宅で読影してもらっています。院外からのアクセスに関しては、ファイアウォールやアンチウィルスはもちろん、端末のログをとるといった対策でセキュリティを強化しています」(小野氏)

将来的には、AIによる読影支援にも期待を寄せています。「画像診断は医療の中でもAIを活用しやすい分野です。診断精度の向上や、読影医の労働負荷の軽減にもつながるでしょう。実用化はまだ先になりそうですが、注目していきたいと思っています」(横尾氏)