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デジタルで変わる中国

2018.10.12

中国・深圳のファーウェイ本社社員が伝える、デジタルなトレンドに見る中国の「いま」


ブロックチェーンで経費精算を簡単に
手間を省き不正も防止

出張費や交際費などの経費精算、面倒ですよね。溜まった領収書の山にうんざりしたり、領収書をなくしてあわてたり、宛名の会社名が間違っていて再発行してもらったりといった経験が、皆さんも一度はあるのではないでしょうか。

中国では、経費精算には「発票(ファーピャオ)」と呼ばれる政府既定の書式による領収書の提出が必要になります。発票は売買の正式な記録とされ、企業の税務申告に必須の書類です。そのため、経費を精算するには、支払時に店舗に雇用主の納税者番号を伝え、正確な情報が記載された発票を発行してもらわなければなりません。その後、会社のシステムに必要な情報を入力し、上司の承認をもらい、発票を経理部に提出し……と長いプロセスを経て、ようやく立て替えた費用が銀行口座に振り込まれます。

発票による精算のやりとりは、店舗にも客にも企業にも大きな手間。また偽造の問題も後を絶ちません。最近では微信支付(WeChat Pay)や支付宝(Alipay)などのモバイルペイメントアプリで電子発票を発行する方法も普及してきましたが、それでも経費精算時には結局プリントアウトしたものを会社に提出することになります。

そこでこの発票の仕組みをより効率よく確実なものにすべく新たに登場したのが、ブロックチェーンを使った発票制度です。微信を運営するテンセントが深圳市税務局、金蝶軟件(キングディーソフトウェア)とともに今年8月に発表し、深圳市内の数か所の店舗でパイロットテストを開始しました。

ユーザーが微信支付で支払を済ませ、アプリ上で「発票を発行する」というボタンを押すと、その取引内容を記した発票がアプリ内の「卡包(カーバオ、カード入れ)」という機能に保存されます。

ブロックチェーンによって経費精算がスマートフォンアプリだけで完結するうえ、不備や不正も防止できる

そこでさらに「経費精算をする」というボタンを押すと、取引の内容がブロックチェーンによって記録され、ユーザー、店舗、会社、税務局の間で同時に共有されます。この時点で経費精算は完了。システムへの入力や紙の発票の提出は不要です。この方法なら、支払から精算、税務申告までのやりとりをすべて正確に記録・追跡でき、発票の不備や不正が発生する余地はなくなるというわけです。

ブロックチェーンの活用は発票だけでなく、固定資産税などの税申告や医療費の請求など、さまざまな領域で行政を効率化する手段として注目を集めており、各地で試験運用が始まっています。最新技術の導入が民間だけでなく公共機関でも迅速に進むのは、やはり中国ならでは。このスピード感で、この国のデジタル化はこれからも加速し続けていくことでしょう。

米雪苹(カイラ・ミー)

ファーウェイがグローバルに発行する機関誌『WinWin』のエディター。2011年にファーウェイに入社し、中英の通訳業務を務めた後、2015年から現職。読書家で幅広い分野の本を多読する一方、ハイキングを楽しむアウトドア派の一面も。