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デジタルで変わる中国

2018.07.06

中国・深圳のファーウェイ本社社員が伝える、デジタルなトレンドに見る中国の「いま」


中国発のトレンドが日本へ
動画共有アプリ『Tik Tok』とライブコマース

『Tik Tok』というアプリをご存じでしょうか? 2016年に中国で登場した動画共有アプリで、10代の若者を中心に瞬く間に流行し、いまでは日本を含むアジア各国で人気を集めています。2018年の第1四半期にはiPhone向けアプリでダウンロード数世界第1位を記録しました。

「リップシンク(口パク)」アプリと呼ばれるTik Tok(中国語では『抖音(ドウイン)』)は、音楽にあわせてユーザーが歌ったりダンスしたりする短い動画を簡単に作成、シェアできるのが特長です。初期には美男美女の動画が話題になることが多かったものの、いまや誰もが歌やダンスのほか、おいしい食事やきれいな景色、特技やお笑いのネタ、カップルや夫婦、子どもどうしの会話など、日常生活のありとあらゆる場面を投稿し、それをシェアしたり真似したりとユーザー同士が活発に交流しています。

1本あたり15秒の手軽な動画撮影、フィルターやスタンプ、特殊効果など“盛れる”機能の豊富さなど、Tik Tokが人気を博した理由は多数あるようですが、その背後にある要因の1つが、おすすめ動画を表示するAIアルゴリズムです。Tik Tokの親会社はニュースアプリ『今日頭条(ジンリートウティアオ)』を運営する字節跳動(バイトダンス)で、AIの研究開発とサービスへの応用で知られています。ユーザーの属性や好みを学習し、関心を持ちそうな動画を飽きないように変化を持たせつつ表示するおすすめ機能によって、一度見始めたら止まらないというユーザー体験を創出しています。

『Tik Tok』のユーザーは日本では10代の若者が中心だが、中国では幅広い世代に人気。ちょっとのぞいてみるつもりがハマってしまったという人が多いという

また、Tik Tokは気に入ったコンテンツにオンラインでチップを渡せる「打賞」機能や、動画に登場する商品を画面上で販売できるアフィリエイト機能など、ユーザーが報酬を得られる仕組みを持つほか、インフルエンサーマーケティングのツールとして大企業にも活用されています。

Tik Tokと同様、中国から日本へと広がりつつあるもう1つのトレンドが、P07でも紹介されているライブコマースです。動画のライブ配信で商品を説明し、視聴者とやりとりしながら販売する新しい形のECで、中国では2016年3月にアリババのECサイト『淘宝(タオバオ)』がライブストリーミング機能の提供を開始してから爆発的にヒットし、瞬く間に同様のサービスが数多く誕生しました。個人で年間数十億円を売り上げるインフルエンサーが続々と出てきたほか、農村部の農民にとっての新たな販売チャネルにもなっています。

中国での成功を背景に、日本でも昨年からさまざまなライブコマースアプリが登場していると聞きます。Tik Tokにせよ、ライブコマースにせよ、若い世代を対象とした中国生まれのサービスやビジネスモデルが日本へと輸出されていくのは興味深い現象です。デジタル化に伴って、中国が「流行の発信地」としての存在感を徐々に強めているといえそうです。

米雪苹(カイラ・ミー)

ファーウェイがグローバルに発行する機関誌『WinWin』のエディター。2011年にファーウェイに入社し、中英の通訳業務を務めた後、2015年から現職。読書家で幅広い分野の本を多読する一方、ハイキングを楽しむアウトドア派の一面も。